線形制御系設計

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内部モデル原理

内部モデル原理は、フィードバック制御系が入力および外乱等の外生信号の生成モデルを持つことで出力誤差抑圧が実現されることを示す原理であり、出力誤差抑制の十分条件を満たすフィードバック制御器の構成を規定する。

準備

制御対象のシステムが次のように表現される場合について考える。
y(s)=P(s)(u(s)+d(s))P(s)=Np(s)Dp(s)\begin{align} y(s) &= P(s)(u(s) + d(s)) \\ P(s) &= \frac{N_{\rm p}(s)}{D_{\rm p}(s)} \end{align}
ここで、u,d,Pu, d, P は入力、外乱、プラントを表し、Np,DpN_{\rm p}, D_{\rm p} は共通因子を持たない実係数多項式とする。このシステムに対してフィードバック制御器 CC を設置し、指令値 rr を用いて入力参照値 urefu^{\rm ref} を生成する。
C(s)=Nc(s)Dc(s)uref(s)=C(s)(r(s)y(s))\begin{align} C(s) &= \frac{N_{\rm c}(s)}{D_{\rm c}(s)} \\ u^{\rm ref}(s) &= C(s)(r(s) - y(s)) \end{align}
また、指令値 rr および外乱 dd について以下のシステムにインパルス信号 δ\delta を入力し生成されるものとして表現する。
Gr(s)=Nr(s)Dr(s)Gd(s)=Nd(s)Dd(s)r(s)=GrL[δ]=Grd(s)=GdL[δ]=Gd\begin{align} G_{\rm r}(s) &= \frac{N_{\rm r}(s)}{D_{\rm r}(s)} \\ G_{\rm d}(s) &= \frac{N_{\rm d}(s)}{D_{\rm d}(s)} \\ r(s) &= G_{\rm r}\mathcal{L}[\delta] =G_{\rm r} \\ d(s) &= G_{\rm d}\mathcal{L}[\delta] =G_{\rm d} \end{align}
上記の信号生成機構を入力生成モデルおよび外乱生成モデルと呼ぶ。

主張内容

システムの出力 yy および出力誤差 ee は次のように表される。
y(s)=PC1+PCr(s)+P1+PCd(s)=PC1+PCGr+P1+PCGde(s)=r(s)y(s)=11+PCGrP1+PCGd=DpDcNpNc+DpDcNrDrNpDcNpNc+DpDcNdDd\begin{align} y(s) &= \frac{PC}{1+PC}r(s) + \frac{P}{1+PC}d(s) \\ &= \frac{PC}{1+PC}G_{\rm r} + \frac{P}{1+PC}G_{\rm d} \\ e(s) &= r(s) - y(s) \\ &= \frac{1}{1+PC}G_{\rm r} - \frac{P}{1+PC}G_{\rm d} \\ &= \frac{D_{\rm p}D_{\rm c}}{N_{\rm p}N_{\rm c} + D_{\rm p}D_{\rm c}}\frac{N_{\rm r}}{D_{\rm r}} - \frac{N_{\rm p}D_{\rm c}}{N_{\rm p}N_{\rm c} + D_{\rm p}D_{\rm c}}\frac{N_{\rm d}}{D_{\rm d}} \\ \end{align}
したがって、漸近的な指令値追従および外乱抑圧の条件は、最終値の定理を用いて次のように記述される。
lims0s1NpNc+DpDc(DpDcNrDrNpDcNdDd)=0\begin{align} \lim_{s\rightarrow 0}s\frac{1}{N_{\rm p}N_{\rm c} + D_{\rm p}D_{\rm c}}\left( \frac{D_{\rm p}D_{\rm c}N_{\rm r}}{D_{\rm r}} - \frac{N_{\rm p}D_{\rm c}N_{\rm d}}{D_{\rm d}} \right) &= 0 \end{align}
ここで、システムが安定であれば一巡伝達関数の根が全て複素平面上の左半平面に存在し、等価的に分母多項式 NpNc+DpDcN_{\rm p}N_{\rm c} + D_{\rm p}D_{\rm c} の根も全て複素平面上の左半平面に存在する。一巡伝達関数の根が複素平面の虚軸上に存在する場合、すなわち安定限界ではシステムの出力が持続振動することから最終値の定理を適用することができないため、ここでは議論の対象としない。全ての極が左半平面に存在するシステムは減衰系であり、零点の有無に関わらずインパルス応答が 00 に漸近することから、任意の実数係数多項式 QQ に対して次の式が成立する。
limtL1[QNpNc+DpDcL[δ]]=0 limtL1[QNpNc+DpDc]=0 lims0sQNpNc+DpDc=0\begin{align} &\lim_{t \rightarrow \infty} \mathcal{L}^{-1}\left[\frac{Q}{N_{\rm p}N_{\rm c} + D_{\rm p}D_{\rm c}}\mathcal{L}[\delta]\right] = 0\\ \Leftrightarrow \ &\lim_{t \rightarrow \infty} \mathcal{L}^{-1}\left[\frac{Q}{N_{\rm p}N_{\rm c} + D_{\rm p}D_{\rm c}}\right] = 0\\ \Leftrightarrow \ &\lim_{s \rightarrow 0}s\frac{Q}{N_{\rm p}N_{\rm c} + D_{\rm p}D_{\rm c}} = 0 \end{align}
上式より、出力誤差のラプラス変換 e(s)e(s) の分母多項式から Dr,DdD_{\rm r}, D_{\rm d} を除去することができれば、出力誤差が 00 に漸近することが確認できる。したがって、出力誤差抑圧の十分条件は分子多項式 DpDcD_{\rm p}D_{\rm c}DrD_{\rm r} の全ての因子を持ち、分子多項式 NpDcN_{\rm p}D_{\rm c}DdD_{\rm d} の全ての因子を持つこととなる。これは分子多項式が分母多項式の持つ全ての根を持つことに等しい。ここでは制御器の極が入力生成モデルの極と外乱生成モデルの極を持つよう、実数係数多項式 RR を用いて次のように設計する場合を例として考える。
Dc=RDdDr\begin{align} D_{\rm c} =RD_{\rm d}D_{\rm r} \end{align}
このとき、出力誤差のラプラス変換 e(s)e(s) は以下のように記述される。
e(s)=R(DpDdNrNpNdDr)NpNc+DpDc\begin{align} e(s) &= \frac{R(D_{\rm p}D_{\rm d}N_{\rm r} - N_{\rm p}N_{\rm d}D_{\rm r})}{N_{\rm p}N_{\rm c} + D_{\rm p}D_{\rm c}} \end{align}
以上より、システムが安定かつ制御器が入力生成モデルおよび外乱生成モデルの全ての極を持つ場合に、出力誤差は 00 に漸近する。
limte(t)=lims0sR(DpDdNrNpNdDr)NpNc+DpDc=0\begin{align} \lim_{t\rightarrow \infty} e(t) = \lim_{s\rightarrow 0} s \frac{R(D_{\rm p}D_{\rm d}N_{\rm r} - N_{\rm p}N_{\rm d}D_{\rm r})}{N_{\rm p}N_{\rm c} + D_{\rm p}D_{\rm c}} = 0 \end{align}
この原理は、出力誤差抑圧の十分条件を「フィードバック制御器を含めたシステムが外生信号の生成モデルを持つこと」と規定するため、内部モデル原理と呼ばれる。本原理は誤差抑圧の十分条件を示すのみであり、フィードバック制御器の適切な次数および構成を示すものではないことに留意する。ここでは全ての外生信号を抑圧するフィードバック制御器について議論したが、フィードフォワード制御器を用いた二自由度制御系を設計する場合にはフィードバック制御器で指令値追従性を担保する必要はなく、外乱抑圧系の設計のみに注力することができる。

外乱生成モデルと制御器構造

ダイナミクスを持つ因果的な外乱を内部モデル原理に基づいて抑圧することを考える。ここではシステムが次のように表現されるものとする。ただし,P, C\bm{P},\ \bm{C} はプラントおよび制御器,r, u,y\bm{r},\ \bm{u}, \bm{y} は参照値,入力および出力,d\bm{d} は外乱を表す。
y=P(u+d)u=C(ry)\begin{align} \bm{y} &= \bm{P}(\bm{u} + \bm{d})\\ \bm{u} &= \bm{C}(\bm{r} - \bm{y}) \end{align}
ここで,外乱のダイナミクスが次のように記述されるものとする。
d˙=Adisd+ωd(0)=d0\begin{align} \dot{\bm{d}} &= \bm{A}_{\rm dis}\bm{d} + \bm{\omega}\\ \bm{d}(0) &= \bm{d}_{\rm 0} \end{align}
Adis\bm{A}_{\rm dis} は外乱生成システムの極を決定するシステム行列であり,ω\bm{\omega} は外乱駆動雑音とする。このシステムについて,外乱から出力までの伝達関数は次のように記述される。
y=(I+PC)1Pd=P(I+CP)1d\begin{align} \bm{y} &= (\bm{I}+\bm{P}\bm{C})^{-1}\bm{P}\bm{d}\\ &= \bm{P}(\bm{I}+\bm{C}\bm{P})^{-1}\bm{d} \end{align}
内部モデル原理に従い,一巡伝達関数 CP\bm{C}\bm{P} が外乱と等しい極を持つように,すなわち外乱生成モデルを含むように C\bm{C} を設計する。
C=(sIAdis)1G\begin{align} \bm{C} &= (s\bm{I} - \bm{A}_{\rm dis})^{-1}\bm{G} \end{align}
ただし,G\bm{G}は適当な伝達関数行列とする。このとき,出力は次のように記述される。
y=P(I+(sIAdis)1GP)1d=P(sIAdis+GP)1(sIAdis)d=P(sIAdis+GP)1(d0+ω)\begin{align} \bm{y} &= \bm{P}\left(\bm{I} + (s\bm{I} - \bm{A}_{\rm dis})^{-1}\bm{G}\bm{P}\right)^{-1}\bm{d} \\ &= \bm{P}\left(s\bm{I} - \bm{A}_{\rm dis} + \bm{G}\bm{P}\right)^{-1}(s\bm{I} - \bm{A}_{\rm dis})\bm{d} \\ &= \bm{P}\left(s\bm{I} - \bm{A}_{\rm dis} + \bm{G}\bm{P}\right)^{-1}(\bm{d}_{\rm 0} +\bm{\omega}) \end{align}
以上より,制御器が外乱生成モデルを含有し,かつ閉ループ系が安定であるとき,外乱は定常状態において抑圧される。外乱抑圧速度は制御器 C\bm{C} に含まれる伝達関数 G\bm{G} によって決定される。

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